学生時代は気づかなかったのだが、アメリカで就職をした私を訪れた叔母を連れてショッピングモールに行った時のこと。「この国ってシャワー文化なのに、バスグッズが豊富ね」。叔母のその一言は青天の霹靂だった。私も朝出かける前にシャワーを浴びる。アメリカの生活にも慣れ、湯船につかることなんて久しくなかった。渡米する前はあまりの長風呂に家族から苦言を呈されていた私だったのに。

長風呂をしないアメリカ人だが、どのショッピングセンターにも結構な数のバスグッズの店が出展している。世界展開の老舗バスグッズブランド、オーガニックがうりの自然派ブランド、ミネラルたっぷりの死海の塩が入ったスクラブで有名なボディケアショップ。特にボディシャンプーやローションの種類の多さは日本のそれとは比べ物にならないほどだ。どのショップにもソープ類、ローション類はもちろん、メイク落としから、おもちゃやマッサージ器具、キャンドルやグラス、バスローブ、メイク用品までビフォア・アフターのバスタイムをより充実させるグッズが並んでいる。まるで、人生のほとんどをバスタイムに費やしているとも言わんとばかりに。

私のアパートの風呂場にも、沢山バスグッズが並んでいたが、お気に入りは、どこの町にでもあるスーパーで売っている洋ナシの香りのするボディシャンプーと顔も体も洗えるオーガニックのリキッドソープだった。とりわけ、ミントの香りがするオーガニックのリキッドソープは、夏の汗ばんだ寝覚めと二日酔いの朝に効果覿面で量販店を訪れるたびにガロン単位で買いためていた。

今では日本でも手に入る製品もあるが、バスグッズショップの前を通る度、あのころのアメリカ生活を思い出す。バスグッズ天国でもっと風呂に入っておけばよかった、と。